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Blog舌癌の早期発見
口の中にできる癌で1番多いのが舌癌です。私の今までの臨床経験では7名の方に口腔癌がありましたが、その中で6名が舌癌でした。1名が知り合いの方、もう一名は私の叔父でした。2人とも亡くなられました。
先月にも昔からの当院の患者さんが舌が痛いとのことで来院されました。傷が去年の10月から治らなく、初診時の視診で悪性が強く疑われたため、大学病院に紹介したところ扁平上皮癌とのことでした。
口腔癌は全身にできる癌の中でも肉眼で発見できる癌ですが、初期に治療を行えば100パーセント治癒します。
傷に気が付いてから半年以上放っておくとリンパ節に転移してしまう可能性があります。
口の中にできる傷や潰瘍と似ているものにアフタ性口内炎がありますが、口内炎は1週間ぐらいで自然に治ります。2週間経っても傷が治らないときはアフタではありませんので歯科医院で診てもらった方が賢明です。
入れ歯や被せ物による処置をすれば治る傷と悪性(舌癌)の傷の違いは経験豊富な歯科医師が見ればわかります。
この経験豊富な歯科医師ということについてどういうことなのかを説明します。
通常、口の中にできる傷は入れ歯等が強くあたったり、それらの尖っている部分が粘膜にあたることによりできます。それらの傷を毎日、何十年も見続けていることにより何年かに1度出会ったがんを見て微妙な違いがわかるのです。
単なる炎症を何千と見ているからこそ表皮の増殖の異常に気がつくわけです。
堀ちえみさんの件でテレビの解説者に対して炎上しています。
しっかりがんを見抜け、それは無理だ、ということなのですが、口腔がんについてが論じられていません。どうして半年も経過したのか、悪性の可能性は全然疑わなかったのか、組織検査をどうしてしなかったのか、また患者さんとの信頼関係はどうだったのでしょうか。
唯一担当医の弁護をするとしたら視診で全然悪性を疑われないような普通とは違った特殊な見え方のがんだったのか。果たしてそんなのがあるのだろうか。
確かに初期の場合ははっきりしないのですが通常は白い膜が張ったような口内炎とは違った独特な傷が見られます。
また、堀ちえみさんは韓国の美容整形に頻繁に通っていたらしくレーザー照射がどうだったのかという記事もありました。
よくちょっとした小さな傷でも癌ではないですかと聞いてくる心配性の患者さんはいます。
その反対に、自分のことを医者嫌いと豪語して我慢している人もいますがそんなことをしていると手遅れになってしまいます。
舌癌を口内炎と判断していたため患者が死亡したということが2013年にありました。
60代女性が1月に歯科医院を受診し、口内炎と診断され、3月まで治療を続けたが改善せず、その後、別の病院で舌がんと診断されて手術を受けた。しかし、肺に転移するなどして12月に亡くなりました。
遺族は歯科医院に対して2千万円の損害賠償を求め、判決は歯科医院の過失を認めて300万円の支払いを命じました。
判決理由は、「歯科医院は舌癌の可能性を認識できたはずで、別の病院に転送する義務を負っていた。」
義務違反と死亡の因果関係は認められないとしたものの、早い段階で適切な治療を受けていれば、もっと長く生きられた可能性があったとのことです。
1月の初診時に傷がいつ頃からあったのか、痛みはあるのかを問診しますが少なくても1、2ヶ月前からあったとすれば、まず悪性の可能性を考慮すべきです。3月まで様子を見たとなると5、6ヶ月経過しているので悪性を疑わなかったのかもしれません。